第16章 第2節

二重否定 ─ 否定×否定=肯定

二重否定は、否定語が2つ現れて肯定の意味を表す表現です。語順リーディングでは「否定が2つ出てきた→肯定の意味だ」と瞬時に処理します。
not un-, never fail to, not without, cannot ... too など、パターンを押さえておくと理解がスムーズになります。
このような表現に出会ったとき、慌てて後ろから解釈するのではなく、頭から読み進めながら意味を組み立てていきましょう。

1二重否定の基本概念

二重否定は、英語では自然に使われる表現で、単純な肯定よりも控えめで丁寧な表現になったり、強調の意味を持ったりします。語順リーディングでは、最初の否定語を見た時点で「否定の流れだ」と認識し、2つ目の否定語が現れた瞬間に「あ、これは肯定の意味になるな」と修正していきます。

日本語でも「やらないわけではない」「知らないことはない」のような二重否定がありますが、英語の二重否定はより頻繁に使われ、様々なパターンがあります。

二重否定の処理方法
  • not un-:「〜でないことはない」→「〜である」
  • never fail to:「〜しないということがない」→「必ず〜する」
  • not without:「〜なしではない」→「〜がある」
  • cannot ... too:「〜しすぎることはない」→「いくら〜してもよい」

語順リーディングでは、パターンを覚えるより「否定が2つ→肯定」という原則で理解していきます。

2例文1: never fail to / not without の基本パターン

例文

The ancient library never failed to fascinate visitors with its mysterious atmosphere, not without good reason.

語順リーディング
The ancient library
古代の図書館が、何か主語として登場
never failed to fascinate
── ここまでが主語。never failed to で二重否定のパターン。「魅了しないことがない」つまり「必ず魅了する」という意味になる
visitors
訪問者たちを、が目的語
with its mysterious atmosphere,
その神秘的な雰囲気で、という手段
not without good reason.
また二重否定。「正当な理由なしではない」つまり「ちゃんとした理由がある」
和訳プロセス
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
The ancient library → その古代の図書館は
never failed to fascinate → 必ず魅了した
visitors → 訪問者たちを
with its mysterious atmosphere, → その神秘的な雰囲気で、
not without good reason. → それには正当な理由がある。
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
その古代の図書館は、神秘的な雰囲気で訪問者たちを必ず魅了したが、それには正当な理由があった。
never fail to は「必ず〜する」、not without good reason は「それには理由がある」という定型的な意味として処理します。二重否定によって、単純な肯定よりも説得力のある表現になっています。

3例文2: cannot ... too / not un- の複雑な二重否定

例文

Scientists cannot emphasize too strongly that climate change is not an uncommon phenomenon in Earth's history.

語順リーディング
Scientists
科学者たちが主語
cannot emphasize too strongly
── ここまでが主語。cannot ... too の二重否定パターン。「強調しすぎることはない」つまり「いくら強調してもよい」
that climate change is
that節が始まる。脇道に入った(that節の内容)気候変動が〜であると
not an uncommon phenomenon
またしても二重否定。not uncommon で「珍しくない」つまり「よくある」
in Earth's history.
地球の歴史において。that節の内容が完結
和訳プロセス
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
Scientists → 科学者たちは
cannot emphasize too strongly → いくら強く強調してもしすぎることはない
that climate change is → 気候変動が〜であることを
not an uncommon phenomenon → 珍しくない現象である
in Earth's history. → 地球の歴史において
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
科学者たちは、気候変動が地球の歴史においてよくある現象であることを、いくら強調してもしすぎることはないと考えている。
この文には二重否定が2組あります。cannot ... too は「いくら〜してもしすぎることはない」、not uncommon は「珍しくない」=「よくある」です。二重否定を使うことで、断定的でない控えめな科学的表現になっています。

4まとめ

  • 二重否定は「否定×否定=肯定」の原則で、語順リーディングでは2つ目の否定語が現れた時点で肯定の意味に修正する
  • never fail to は「必ず〜する」、not without は「〜がある」という定型的な意味として処理する
  • cannot ... too は「いくら〜してもしすぎることはない」で、強い推奨を表す
  • not un- の形は「〜でないことはない」つまり「〜である」で、控えめな肯定を表現する
  • 二重否定は単純な肯定よりも丁寧で控えめ、または強調的なニュアンスを持つ
  • 後ろから訳そうとせず、頭から読み進めながら「否定が2つ→肯定」と瞬時に判断することが重要
  • 複雑な文でも、各二重否定のパターンを個別に処理していけば理解できる

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