第5部 第10章 10-1

共通要素の省略 ─ 繰り返しを避ける英語の習性

英語は同じ表現を繰り返すことを嫌い、2回目以降を省略する習性があります。語順リーディングでは、「何かが足りない」と感じたら、前に同じものがあるはずと考えて補完します。省略を見破ることで、英文の意味が明確につかめるようになります。

1省略の基本原理

英語には「繰り返しを避ける」という強い習性があります。同じ単語や表現が文中で2回目以降に出てくるとき、英語話者は自然にそれを省略します。

これは効率性と美的センスの両方から来ています。同じことを繰り返すのは冗長で美しくないと感じるのです。省略が起きやすい要素は動詞、目的語、前置詞句、そして時には主語まで含まれます。

省略検出のポイント
  • 文法的に何かが足りない感覚:動詞がない、目的語がないなど
  • 前を振り返る習慣:省略されたものは必ず前に現れている
  • 並列構造への注目:andやorで結ばれた部分で省略が頻発
発展:省略の種類

省略には大きく分けて動詞省略目的語省略前置詞句省略があります。また、比較構文では特に複雑な省略が起こりやすく、関係代名詞that/whichの省略も頻繁に見られます。

2基本的な動詞省略

例文 1

He likes tea and she coffee.

語順リーディング
He likes tea
── ここまでが主語。目的語teaが来て、一つの文が完結している。
and
接続詞が来た。何かと何かを並列でつなぐ合図。同じレベルのものが続くはず。
she coffee
「彼女、コーヒー」。主語sheの後に動詞がなく、いきなり名詞coffeeが来ている。何かが省略されている感覚。前の文のlikesが省略されていると判断
和訳プロセス
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
He likes tea → 彼は茶を好む
and → そして
she coffee → 彼女はコーヒーを(動詞likesが省略されている)
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
彼は茶を好み、彼女はコーヒーを好む。
並列構造で同じ動詞likesの繰り返しを避けるため、2回目が省略されています。この種の省略は英語では極めて自然で、むしろ省略しない方が不自然に感じられるほどです。

3複雑な省略構造

例文 2

The company promised employees better working conditions and the government fair taxation policies.

語順リーディング
The company promised employees better working conditions
── ここまでが主語。promisedの後に間接目的語employees、直接目的語better working conditionsが続いて完全な文構造。
and
接続詞。何かと並列でつながる合図。前の文と同じレベルの何かが続く予感。
the government fair taxation policies
「政府、公正な税制政策」。主語the governmentの後に動詞がなく、直接目的語のような部分が続いている。前文のpromised(と間接目的語構造)が省略されていると判断。
和訳プロセス
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
The company promised employees better working conditions → 会社は従業員により良い労働条件を約束した
and → そして
the government fair taxation policies → 政府は公正な税制政策を(promised citizensが省略されている)
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
会社は従業員により良い労働条件を約束し、政府は(市民に)公正な税制政策を約束した。
ここでは動詞promisedだけでなく、間接目的語の位置も省略されています。この種の複雑な省略では、文脈から「誰に対して」が自明であるため、その部分も併せて省略されることがあります。

4まとめ

  • 英語は同じ表現の繰り返しを嫌い、2回目以降を自然に省略する
  • 語順リーディングでは「何かが足りない」感覚を大切にし、前に戻って補完する
  • 省略が最も頻発するのは並列構造(andやorで結ばれた部分)
  • 動詞、目的語、前置詞句、時には主語まで省略の対象になる
  • 省略されるものは必ず前の部分に現れているため、振り返りが重要
  • 複雑な省略では動詞と目的語が同時に省略されることもある
  • 文脈から自明な要素は省略されやすい傾向がある

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