第1章 英語の語順で読む
文の骨格をつかむ
─ 英語の語順で意味を追う
英語は「語順」で意味が決まる言語です。
日本語のように「てにをは」で関係を示すのではなく、どこに置かれているかで役割が決まります。
この章では、英語の語順に沿って「頭から」意味をつかむ読み方を身につけます。
1英語は「配置の言語」─ 語順が意味をつくる
英語を読むとき、多くの受験生は「まず動詞を探して、主語を確認して、後ろから前に訳す」という読み方をしています。
しかし、ネイティブスピーカーは英語を頭から語順通りに理解しています。後ろから前に戻ることはありません。
なぜそれが可能なのか? それは、英語が「配置の言語」だからです。
英語では、単語が置かれた位置によって、その単語の役割が決まります。
英語の語順ルール ─ 「だれが → どうする → 何を/どんな」
- 動詞の前に置かれた名詞 → 「だれが」(主語)
- 動詞 → 「どうする」(述語)
- 動詞の後に置かれた名詞 → 「何を」(目的語)or「どんな」(補語)
つまり、動詞が現れた瞬間に、それより前が主語だと確定する。これが英語の語順のいちばん大事な原則です。
たとえば I love you. を読むとき、「私は → 愛しています → あなたを」と日本語に変換していますか?
おそらく、英語のまま意味が入ってきているはずです。
その「英語のまま分かる」感覚を、複雑な文でもキープするのが目標です。
なぜ「後ろから訳す」が生まれたのか
日本語は「〜は…を…する」(SOV)の語順で、英語は「〜が…する…を」(SVO)の語順です。英語の語順のまま日本語にすると不自然になるため、「後ろから訳す」テクニックが発達しました。
しかしこれは和訳するためのテクニックであって、英語を理解するプロセスではありません。まず英語のまま理解し、その後で日本語に「置き換える」のが正しい順序です。
2短い文を語順通りに読む
英語を語順通りに読むとき、大事なのは日本語に訳しながら読まないことです。
英語のかたまり(チャンク)を頭から受け取り、意味をそのまま蓄積していきます。
そして、動詞が現れた瞬間に「ここまでが主語だった」と確定し、「この後に目的語が来る」と予測する──
この動詞をキャッチする感覚が、語順リーディングの核心です。
The ability to think critically about complex issues requires years of practice.
この文を、日本語に変換せずに、頭から意味を追ってみましょう。
語順リーディング
The ability to think critically about complex issues
── 「批判的に考える力」が主人公として登場。まだ動詞が来ていないので、主語が続いている
requires
── ここで述語動詞が現れた。主語が確定する。ここまでの全体(The ability ... issues)が「だれが」。そして requires は「何かをなくてはならない」→ この後に「何を」が来る
years of practice.
── 「何年もの訓練」。動詞の後ろだから「何を」にあたる。文が完結した
ポイントは、各チャンクで日本語の文を組み立てているのではなく、英語の語順のまま意味が蓄積されていくことです。
頭の中では「The ability ... は、requires する、years of practice を」── この英語の語順のまま意味が分かっている状態が、語順リーディングのゴールです。
入試で「和訳せよ」と言われて初めて、いま理解している内容を日本語に置き換えます。
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
The ability to think critically about complex issues → 複雑な問題を批判的に考える能力
requires → 必要とする
years of practice → 何年もの訓練
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
複雑な問題を批判的に考える能力を身につけるには、長年の訓練が必要である。
require のコアイメージは「なくてはならない」。①では「必要とする」と当てたが、日本語として自然な「〜には…が必要である」に整えた。コアイメージの範囲内であれば、どの訳語を選んでも問題ない。
3長い文を語順通りに読む ─ 脇道と本筋を見分ける
入試で出る英文は、1つの文の中に関係詞節や that 節などの「割り込み」が入り、主語と動詞が離れてしまいます。
しかし、英語の基本は変わりません。「だれが → (脇道) → どうする → 何を」です。
脇道に入っても、本筋の動詞はまだ先にあると構え、動詞が来た瞬間に主語を確定させます。
脇道のサイン
- who / which / that(関係詞)→ 直前の名詞の補足説明が始まる
- 名詞 + that 節(同格の that)→ その名詞の中身の説明が始まる
- 分詞(-ing / -ed)が名詞の直後 → 後ろから名詞を説明している
脇道に入ったら、「この中の動詞は本筋の動詞ではない」と意識しましょう。本筋の動詞はまだ先にあります。
The fact that many of the traditions we take for granted today were originally introduced by merchants traveling along ancient trade routes is often overlooked by historians focusing on political events.
語順リーディング
The fact
── 主人公は「ある事実」。どんな事実だろう?
that many of the traditions we take for granted today
── 脇道に入った(同格の that)。fact の中身の説明。「今当たり前だと思っている伝統の多くが…」。ここの take, were は脇道内の動詞であり、本筋の動詞ではない
were originally introduced by merchants
── まだ脇道の中。「もともと商人たちによって持ち込まれた」
traveling along ancient trade routes
── merchants の補足。「古代の交易路を旅する」商人たち
is often overlooked
── ここで本筋の述語動詞が現れた。The fact(+ that節の中身)が主語だったと確定。その事実は「しばしば見過ごされている」
by historians focusing on political events.
── 誰に?「政治的な出来事に注目する歴史家たちに」。文が完結した
① 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える
The fact that ... trade routes → 今日当然と思っている伝統の多くが古代の交易路の商人たちに持ち込まれたという事実
is often overlooked → しばしば見過ごされている
by historians focusing on political events → 政治的な出来事に焦点を当てる歴史家たちによって
② コアイメージの範囲内で、文脈に応じ適切な日本語にする
今日私たちが当然のことと考えている伝統の多くが、もともと古代の交易路を行き来する商人たちによって持ち込まれたものであるという事実は、政治的な出来事に焦点を当てる歴史家たちによってしばしば見過ごされている。
overlook のコアイメージは「上から見て通り過ぎる」→「見過ごす」「見落とす」。take for granted のコアは「当たり前として受け取る」→「当然のことと考える」。それぞれのコアイメージの範囲内で、文脈に合う日本語を選んでいる。
4精読のプロセス ─ まず英語のまま理解し、それから日本語に置く
ここまでの流れを整理しましょう。英文を読んで和訳するまでのプロセスは、次の3段階です。
精読の3段階
- ① 語順リーディング:英語を頭から語順通りに読み、日本語に変換せずに意味をつかむ。動詞をキャッチして主語を確定し、脇道と本筋を区別しながら読み進める
- ② 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える:和訳を求められたら、各チャンクのコアイメージから日本語にする
- ③ 統合する:チャンクごとの日本語を自然な1つの文に整える。コアイメージの範囲内で文脈に合う訳語を選ぶ
精読は多くの場合、和訳のために行います。
しかし、和訳するためにも、まず英語を英語のまま理解しておくことが非常に重要です。
①で英文の構造と意味をしっかり掴んでおけば、②③は「すでに理解していることを日本語に変換する」作業になります。
逆に、①を飛ばして最初から日本語に変換しようとすると、複雑な文で必ず行き詰まります。
英語のまま理解した内容を軸に、そこから適切な日本語を選んでいく──
これがこの教科書で身につける精読のプロセスです。
コアイメージで訳語を選ぶ
和訳で大切なのは、辞書の第一義にこだわらないことです。英単語にはコアイメージ(核となる意味)があり、文脈に応じてさまざまな日本語になります。
たとえば demonstrate のコアは「目に見える形で示す」。文脈によって「実証する」「発揮する」「示す」「明らかにする」など、さまざまな訳語が可能です。コアイメージの範囲内であれば、どの訳語でも正解です。
5まとめ
- 英語は「配置の言語」── 語順が意味を決める(「だれが → どうする → 何を」)
- 動詞が現れた瞬間に、それより前が主語だと確定する── これが語順で読む最大のコツ
- 英文は頭から語順通りに、日本語に変換せずに意味を追う
- 関係詞節・that節は脇道。脇道の中の動詞に惑わされず、本筋の動詞を待つ
- 精読は3段階:① 語順リーディング → ② 単語のコアイメージをもとに意味をざっくり捉える → ③ 統合する
- 訳語は辞書の第一義ではなく、コアイメージの範囲内で文脈に合うものを選ぶ
- 和訳のためにも、まず英語のまま理解することが出発点
6関連する記事
- 主語が長い文 → 1-2「本筋の動詞を待つ力」:主語が10語、20語になっても動じずに本筋の動詞を待ち構える練習をします。
- 分詞の割り込み → 4-3「分詞構文」:例文2の traveling along ... のように、分詞が割り込んでくるパターンを体系的に学びます。
- 同格の that → 9-4「同格の that」:The fact that ... のように、名詞の中身を説明する that 節を詳しく扱います。